令和3年度第3回研究局会報告 持ち寄り研②

令和3年7月16日、オンラインにて第3回の研究局会が行われました。

今年度も「子どもの心が動くとき」というテーマで、研究を深めていきます。

持ち寄り研修の二回目は、局員4人の実践を取り上げました。

以下にご報告します。

【練馬区立北原小学校 金垣】

「春のアルバム」(4年生)

○実際の空気を感じることはとても大切。小さい紙にどんどん表すことの気軽さ、抵抗感のなさがとてもいい。クレヨンと絵の具って2年生までしか使わないことも。描画材の特徴、良さの再認識としてもいい。

○表現を認める金垣先生の度量がいい。表現が保障されている。後ろの画用紙の色とアルバムということについて聞きたい。

金垣 最初に「アルバムにするよ」と伝えておきました。自分で見つけた小さい春を集めて自分の「春のアルバム」にしよう、と。色画用紙はたくさんの色を用意しました。自然と淡い色を選ぶ子が多かったのですが、濃い色を選ぶ子も少しはいた。自分の感性で、絵に合う下の画用紙の色を選んでいた。




【文京区立汐見小学校 宮内先生】

「組んで変身ダンボール」(4年生)

宮内 色水の造形遊び。友だちと関わりながら活動し、相互鑑賞が多く生まれていた。新聞紙の造形遊びも行った。新聞紙で部屋をつくっている子供もいた。オンラインで感じられない、奥行きや材質感を授業では大切にしたい。

 段ボールの造形遊び。どんどん組んで行く。給食室から段ボールをもらった。1人でやりたい子もいたし、友達と活動する子もいた。友だちと合体してロボットをつくっている子もいた。平らだった段ボールが立体的になっていった。

 絵はテクスチャーを大事にした授業を行った。様々な手触りのものをどんどん貼って行く活動。オンラインがどんどん進むにつて、友だちとの関わりや身体的な図工がどんどん大事になってくるのではないかと感じている。

○休み時間のエネルギーを観察する視点がおもしろい。身体性や友だちとの関わりなど、東京の環境とコロナの中で豊かな経験をさせてあげたいなと思う。

○最後の絵の題材の投げかけはどんな感じだったか聞きたい。4年生の手触りから始まる題材。

宮内 最初は布の画用紙をつくろうとなげかけました。そこからは、動物を表現する子や、抽象的に進んで行く子もいた。布をさいたりしている子もいた。そうするとリボンや糸みたいになる。手を動かしながら考えていました。

○養生したり、布をしいたり教師の環境設定のこだわりを感じた。造形遊びのその後について聞きたい。使った後の材料はどうしたか。また、鑑賞の時間はどのように行ったか。

宮内応・材料は主事さんにお願いし、リサイクルした。鑑賞は、友達との関わりを意識して投げかけ、子供たちとは、言葉で色々なやりとりをする中で、価値付けをしていくことが大事だと思う。

○サステナブルな図工も考えて行く必要がある。大量の材料というのは非常に魅力的だが、その「大量」をその後どうするのか、というのが課題でもある。どなたかこのように造形遊び等で使った材料のその後についてお話し等あれば。

○プラスチック系のリサイクルできないものは難しい世の中になってきている。新聞紙や段ボールはリサイクルできるのでよい。

○前回の局会で紹介した題材の話だが、お花紙を使った造形遊びの後、そのお花紙でマスコットをつくった。つめものに使うことが多い。実際は使えるものばかりでないのが難しい。

○材料をなにか使えると思ってとっているので、図工室がゴミ屋敷になっている。(笑)





【杉並区立小学校 小林先生】

「絵の具スケッチ」(5年生)

小林 一人一人の思い入れのある学校がかけていて、いい時間になったと思う。いつもは図工室で絵をかくが、外でかくのもいいなという子や、自然がいっぱいだったとあらためて気付く子もいた。いつもはあまり気にしていないものにも、よく見ると面白いという意見もあった。また、植物の成長も確認できた。春にほのぼのとした作品になった。

○外に出る、環境が変わる、ということで子供の「ものの見方」が変わる。様々な気付きがあっただろうと感じた。空の色や緑の色。図工室の中だけでは見付けられないもの。金垣さんの題材とつながるところもある。台紙はどのように提示したのか聞きたい。

小林 外での活動なので、画用紙だと強度がないと思い、黄ボール紙にした。キャンバスのイメージ。かき心地もいいのかなと。黄ボール紙に胡粉をまぜた白いアクリル絵の具を塗っている。最初に黄ボール紙を破いて、様々な形をつくってから外に絵を描きに出た。画用紙の大きさについては、迷った。破ることについては、それが必要だったのかどうか、という課題も感じる。また、紙が反るので重しをのせた。子供一人当たり3〜5枚ほど描いていた。「外で描く」ことを中心に考えながら材料を準備した。

○外に行く前にどう投げかけについて聞いてみたい。また、黄ボール紙を破るところが、その後の活動にどう繋がっていったのかも合わせて聞きたい。

小林 最初、子供たちに「学校の中で好きな所ある?」と聞いた。子供たちからは「芝生」というキーワードがたくさんでた。そこで、「せっかく天気がいいので外に行かない?」と投げかけた。学校のいいなってところを気楽な気持ちで描きにいこう、と。

 黄ボール紙を破いて一つの作品にまとめていくことは、最初に子どもたちには伝えておいた。子供たちはそれを前提に、考えながら進めていたと思う。

○金垣さんのようにアルバムにしたり、小林さんの作品にしたり、最終的な落としどころをどうするか、というアプローチは様々。子供たちの思考の流れとして、そこにどう繋がっていくのかは、もっと研究して行く余地はあるのかな。子供たちの思いを基に、自然な流れで。様々なアプローチの仕方を考えていければいいと思う。

○外に出て描くと、身体でかいているイメージがある。「運動しているように描く」というイメージ。紙を破ることは面白いと思う。金垣さんの題材の直線的な面白さと、小林さんの題材の不定形な形の面白さと、同じ小さい紙でもアプローチは様々ある。

話は変わるが、小林先生の写真がとてもいい。ひきで撮るだけでなく、子供の目線で撮るなど。子供を撮る視点も研究の中では大事だと思う。どんな感じで撮影したか聞きたい。

小林 子供のいいなという瞬間を撮りたいので、いつでも撮れるよう常に携帯している。



【武蔵野立本宿小学校 栗本先生】

「私のバラ色の人生」(6年生)

栗本 今の6年生は、昨年度、表現を安心して行えない環境で、活動が深まらないようなところがあったため、「安心して表現して欲しい」という思いが強くあった。そこで、まず事前課題を出した。家で自分の好きなものを探し、スケッチをしてくる、というもの。

そしてそれを平面に再構成していくという題材である。材料も子供たちが自分で選べるようにし、表現方法も考えて欲しかった。描くものは事前課題として取り組んできているため、そういう意味での安心感はある。

自分が今まで学んだことを生かして活動が進んで行った。自分の好きなものを配置して行く中で、様々な発展があった。小林さんと同じで、スペシャル感を出す為にボール紙に白色を塗った。普段なかなか活動が進まない子も一生懸命活動していた。

色鉛筆でかく子もいれば、絵の具で表現する子もいた。

○しっかりかける6年生だなあ。と思った。スケッチをしたことで(準備をしたことで)前向きに活動したことが作品から伝わって来た。

○教員の意識で子どもたちは変わって行くことを感じた。

○「バラ色の人生」はスケッチの時点で、もう作品のようだった。

栗本 6年生からは「今年はがんばろう」という気持ちを感じた。その思いを表現につなげたかった。タイミングもあると思う。子供の実態に合わせて、負荷をかけたりサラッとやったりすることが必要だと思う。

○再構成するあたりに難しさはあったのか。

栗本 どういう表現方法で行うのか、ということと、スケッチをどう組み合わせていくか、ということを考えさせた。地道にやる子も多く、コツコツとやる方が、この6年生にはあっていると考えるが、うまくはまらない子もいる。子供の実態を教師がどう見るのかが大切だと思う。


「はさみのアート」(2年生)

〇色画用紙の意図について聞いてみたい。

栗本 教科書では、白黒で表現させる題材になっているが、それよりも色が合った方が低学年は楽しいし、発想も広がるのではないか、と考えてこのようにした。



「えのぐじま」(2年生)

栗本 「えのぐじま」の話をして活動がスタートした。共同絵の具でどんどん描いて行く。10枚以上描いた子もいた。共同絵の具は、服に付いても取れるもの。片付けのことを考えることも大事。最近はそれを意識しながら使っている。

〇アクリル絵の具と水彩絵の具のよさについて、先生によって考え方が様々だなと感じた。

○栗本さんが子供たちの様子を見て感じている部分が、教師にとって大事な素養であると思う。そのあたりが教師としてのセンスだなと感じる。

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いかがでしたでしょうか。

次回は8月に行われた持ち寄り研修③についてご報告する予定です。

よろしくお願いします。

担当:練馬区立北原小学校 金垣 洋

東京都図画工作研究会

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