【図工室探訪】中野区立塔山小学校 門脇あずみ先生

 都内各ブロックの図工室を探訪し、「空間」に留まらず、「人」「取り組み」「考え方」など、多角的な視点から取材をし、発信していきます。今回は、門脇あずみ先生の図工室です。

 

子供をインスパイアする空間づくり 

 図工室は学校の中の「クラフト・ルーム(工作室)」という機能的な役割だけではなく、創造力を触発し、ひらめきを引き出すような、子供たちにインスパイアを与える空間「クリエイティブ・ルーム」という役割も担っているのではないだろうか。 

 門脇先生の図工室は、遊び心がたっぷり。まさに、子供たちをワクワクさせ、インスパイア(触発)してしまう「クリエイティブ・ルーム」だと思う。 



  「くぎ」「紙やすり」「ステープラー」とラベリングされている引き出しの並びに、「おたから」「つちのこ」「ズコちゃんの家」なる引き出しが混ざっている。これは一体!

 「ズコちゃんの家」と書かれた引き出しには、郵便ポストとドアがちゃんと付いている!引き出しを開けてみると、中にはズコちゃんという手作りの人形が住んでいた。 

  ズコちゃんの家には、なんと、テレビもエアコンも完備されている。おやつまである(もちろん本当には食べられないもの)。同じように「つちのこ」と書かれた引き出しには、つちのこたちが住んでいて、居心地よさそうな部屋が用意されている。 

引き出しの中に住んでいた4匹のつちのこ。

  このつちのこ、門脇先生が「今日、つちのこを見たんだ!」と冗談を言ったことが発端になり、子供たちが自分なりのつちのこを、つくって持ってきてくれたことから始まったのだとか。

  こんな引き出し必要だろうか? もちろん、図工の学習を成立させる上では必要ない。しかし、すべて意味のあるものだけで埋め尽くされていない、無意味の入る「すき」(隙間)が、子供たちに「もっと自由でいいんだよ」と呼びかけてくれているように見えるのだ。 


図工室の隣に、5年生の家が!? 

  図工室の向かい側の教材室のような部屋に、郵便ポストと呼び出しベル、そして「5年生」と書かれた表札(いずれも、子供のお手製)があるのに気がついた。「これは一体、どういうことですか?」と尋ねると、門脇先生が中へ案内してくれた。

  中に入ると、ダンボールで部屋の中がリノベーション(!?)されていた。「ここに5年生が住み着いているんですか?」と思わず尋ねると、ダンボールを使った造形遊びをこの部屋でやって、そのまま残しておいているという。 

  自分たちがつくり上げた居心地良い空間が、一時的であれ学校の一角に存在していることは、きっと5年生の子供たちをワクワクさせるだろうと、想像する。

  造形遊びにおいて、片付けが一つのネックになっていることは多い。つくっても、その時間のうちにあっさりと片付けてしまうことを知ると、子供たちの活動意欲が下がることもある。そうは言っても図工室のような常時的に使用する空間に、大型の造形物を残しておくことは難しい。しかも、活動が盛り上がればそれだけ活動が大掛かりになり、片付けるだけでも少なからぬ時間をとってしまう。 

 そのような観点で、図工室にも近く、鍵のかかる教材室のような場所を造形遊びの空間にするというアイディアは、成果を少しの時間残しておくことができる上に、変身した空間をじっくり味わいながら過ごしたり、鑑賞したりすることもできる画期的なアイディアではないだろうか。もちろん、教材や道具の安全な管理と、いかに両立させるかという点には留意する必要がある。 


図工の時間に子供は、つぶやく

  「先生!ガムテープのむらさきを多めに買っておいてください。」 「よーし!本気モード入ります!!」 図工の時間に、子供たちが不意にこぼした「つぶやき」が、図工室の前の掲示板に、たくさん貼ってあるのを見つけ、思わず釘付けになった。

 これは、「ずこうしツイッター」と名付け、門脇先生が取り組んでいる試みだ。

  図工は、形や色などを使って、絵や立体で表現する時間である。しかし、考えてもみれば、図工の活動中、子供たちは無言でただただ手を動かしてはいない。描いたり、つくったりすることに付随して、声が漏れてくる。「ふー」とか「あっ」というような、言葉というよりも呼吸に近い声もあれば、「よし!」「いいねー」と自分の表現を確認するような声もある。相手に向けた声もあるし、自分に向けた声もあるし、現れた形や色に向けた声もあるだろう。

  そういう「声」「言葉」に注目して見ると、図工の時間に起こっている出来事が、また違った角度から見えてくるのかもしれない。 


 門脇先生は、エプロンのポケットに忍ばせたメモ帳で、つぶさにそれを記録して、消えてしまうはずだった言葉を、こうして見えるようにしている。 

  引き出しの中の子供の痕跡、教材室の5年生たちの気配、そして授業中の子供たちの声や息づかい・・・。子供たちの下校後の図工室を訪ねたはずなのに、子供たちがいたような錯覚を覚える。  学校の中に、子供たちが、素のままで子供らしくいられる場所を、門脇先生はつくろうとしているように感じた。そしてそれは、子供たちが伸び伸びと表現することを支える上で、とても大切なことなのだと思った。 

 取材担当:渡邉裕樹(昭島・つつじが丘小)  

東京都図画工作研究会

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