【図工室を研究する】あきる野市立西秋留小学校


 東京都には1250余りの図工室があるが、一つとして同じものはない。均一的な「普通教室」とは違い、バリエーションに富んでいる図工室。その一つ一つを探訪するだけでも面白い。
 面白がるだけではもったいない。材料や用具の置き方、机の並べ方、掲示物の内容などなど、この空間をつくり出している要素の一つ一つに、図工専科の教育観や授業観が表れている。そして、空間のちょっとした工夫一つで、授業や子供の学びを変えられることがわかる。図工室を研究するということは、教科研究の一つの切り口として意味があるだろう。

 部屋を囲む四方の壁には、棚もなく、一見すると材料も用具も目に見えない、とてもすっきりした図工室。「どうしてこんなにきれいなのですか?」とたずねると、返ってきた答えは単純明快。「狭いからです」。そう言われてみれば、確かに狭い。

 子供が活動しやすいスペースと、動きやすい動線を確保することを最優先して、教卓も置かない。材料棚も以前は置いていたが、片付けてしまった。その代わり、頭上に渡されたロープに、材料の入った透明の袋がぶら下がっていた。実に何十種類という多種多様な材料。

 各家庭や地域からたくさん材料をいただいているのだという。ペットボトルのキャップを募集すると、あっという間に土囊袋20袋も集まってしまった。近くの工場から、布も大量にいただくことができる。「本当は、材料を棚いっぱいに並べておきたいとも思うけど、スペースがありません。」だから、各授業に応じて、材料を袋に入れてぶら下げるスタイルにたどり着いた。いろいろな図工室を見てきたが、このやり方は斬新だ。(大量の材料は、どん突きの廊下スペースや準備室にしまってある。)

しばらくすると、久家先生が図工室を歩き始めた。「これ、私の通路なんです」。この狭い図工室に40人近い子供が入って席に着くと、実は先生が通れる道は、限られてしまう。久家先生は、そんな空間の中で、どんな経路で机間巡視しているのか、自分の歩き方の癖を2・3年かけて研究してみたという。そして、先生の動線に、特に支援が必要な児童が座れるように、毎学期の席替えは先生の指定席にすることにしたという。しかし、それは狭いかどうかに限らず、私たちが常に心がけなければいけないことかもしれない。

 図工室の大きな窓からは、間近に大岳山や陣馬山、その向こうに丹沢・大山の稜線が見渡せる。残念ながら取材に行った時間は夜で、見ることができなかったが、休み時間に子供が書き残していったという、図工室に貼られていた小さな絵に、その景色が描かれていた。 

取材担当者:渡邉 裕樹(昭島:つつじが丘小)

東京都図画工作研究会

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