研究局 7月局内授業 協議会記録①

7月に行われた、研究局・局内授業の協議会の様子をご紹介します。

以前アップした授業の様子とあわせてご覧ください。

今回は、2回に分けてお送りします。


◯研究局テーマについて(練馬区立北原小学校:金垣) 

今年度の研究テーマは『子供×発見』。図工が好きな子供たちが多いのは、自分に預けられている部分が大きいからだと思う。子供が自ら学んでいるというのを感じてくれているのかなと。トップダウン型(教え込み)の授業ではなく、ボトムアップ型(子供主体)の授業にしていくことで、こちらの想像を超えていくことがたくさんあって、それが僕は嬉しいし楽しい。 

研究局では、「子供も大人も喜び溢れる図工の授業を追求して発信する」ということを最上位目標として設定した。子供も大人も喜びを感じられるのはどんな時かなと考えた時に、「発見」というキーワードが出てきた。そこに学びの主体である子供を加えて「子供×発見」という研究テーマにした。 

目指す児童像:自分の感覚で発見することを楽しむ子 

テーマの中身として、3本の柱を立てた。

・子供が発見する図工の授業づくり

学びの主体はあくまで子供であるということ。子供が造形的な実感を得るために教師が、子供の心が動く導入や、材料・用具、環境をどのように設定するか考えていく。

・子供を発見する教師の目
子供の見取りの感度を高めていく必要があるということはもちろん、さらに今の社会を生きる目の前の子供達に足りないもの、必要なものはなんだろうという課題意識をもって授業をつくっていくということを意識していく。
・子供と発見する多様な図工の価値
学習指導要領のその先へという思いを込めた。これからの社会に出ていく子供達に何を感じて欲しいのか、何が大切なのかということを考えていく。


つまり、子供が主体的に発見を楽しむ授業をつくって、子供を見る教師の目の感度を高めていくことで、子供と発見する多様な図工の価値が見えてくるのではないかということ。

本日の授業を通して、どのような子供の姿が見られたか、子供たちが発見したであろうこと、子供たちに残っていくだろうこと、そんなことをたくさん語ってほしい。


〇分科会提案(八王子市立第一小学校:森)
「光のカサナリウム」の研究の経緯について
そもそもこの授業の発端は、去年の10月に研究局の講師に南先生に来ていただいた際に授業者である菅先生が言われた一言から始まっている。
「高学年の思考する楽しさもあるのよ」
そこで、高学年の思考する楽しさについて考えた。例えば子供たちは、まず材料と出会って、色んなことを試していく中で自分のゴールに向かってそれを見て振り返ってという活動を繰り返していく。この流れの中でも特に試す、ゴールに向かう、作品を見るという、中盤から後半の流れに注目した。
 また、もう1つ授業を考える上で大切にしたことは、授業者の思い。菅先生が趣味のダイビングで感じている「海の中から見上げる景色の美しさ」を子供たちに感じとって欲しいという思いから、「光」「透ける」「見上げる」といったキーワードをあげて考えることにした。
 まずは、「透ける」というキーワードから様々な材料やその透け方を試したが、子供が十分に活動に取り組んで、さらに操作のしやすい材料として透明なアクリルの箱を選び、蓋つきの透明な箱の中にインクとのりを混ぜて描いたものとか、プチプチなどの透明な材料を入れて構成していく活動はどうだろうかと考えた。手軽に出し入れしやすくて、箱のサイズ感とか形状から、かかげて見やすいのではないかというのも魅力。 


 本時の「光のカサナリウム」は、指導案にも書いてあるように、光に透ける色の美しさ、材料の組み合わせや重ね方で変化する見え方の違いなど、見付けたことから思いをもち、透明な箱に自分をイメージした空間、カサナリウムをつくるという題材である。 

 場の設定については、自然光で見上げることを大切にした。空を見上げると背景に何もなくて、作品の中の空間がフラットに見える。晴れの日とか曇りの日とか、電灯でとか家のライトでとか、子供が作品を持ち帰った後も、それぞれの見方で作品を味わってほしいという願いも込めている。また、本題材における思考している姿というのを、つくる、見る、つくるというのを繰り返している姿であると考えた。箱に入れているものを入れ替えたり、操作したり、絵の具を何度も重ねたり、見上げたり試行錯誤を繰り返す様子が見られたと思う。 

 

〇授業者自評(八王子市立別所小学校:菅) 

 別所小の子供たちは、元気で素直。今日も何人かいたが、得意な子は、試したことから見付けるということができるが、何をしていいかわからない、自分がやった行為がいいと思えず残らないという子も何人かいる。そういう子たちも含めて、試しながら「いいな」を見付けて、自分のつくりたいという思いに変えてもらえたいと思った。つくり、つくり変えたりしてできたところから自分のイメージをもつことが、この感覚的な部分が多い子たちだからこそ合っていると思った。

 別の学級での事前授業は、「光の贈り物」という投げかけで行った。子供に落ちやすい投げかけとして、この箱にプレゼントをもらっているというようなイメージできたらいいかなと思ってやってみたが、こちらの意図が伝わりにくかったように感じた。光を感じるには色や影など、透明ではないものも必要だと思った。 

 そこでたくさん試してほしい「重なり」という行為と、空間・場所を表す「リウム」という言葉を組み合わせた「カサナリウム」という造語をつくった。自分だけの場所、空間をつくろうという投げかけの方が子供にとってはわかりやすいようだった。 

今回使用したアクリルの箱は、ある程度試せる大きさ・厚みであったと思う。まだまだ練りきれていないところもあるので、ご意見いただいて、もっと題材を詰めていきたい。


〇協議 (教科提案部と研究局が混ざって3グループで協議)
〈森先生のグループ〉
・今回研究局員が観察対象児童の活動を見取ったので、その子について話をした。彼は、思ったことがどんどん口から出ていくタイプ。最初はじっくり取り組んでいたが、のりを伸ばして見に行った瞬間、「あっ!きた!これだ!」と言っていて、彼の中で、自分のなかに目指す綺麗なイメージみたいなものがあって、それに向かって表現していたことがわかって、面白かった。最初は、「こっちから見た方がいい」と言っていたが、「今はこっちから見た方がいい」と言っていて、見る方向も意識していたということが見てとれた。
・思考については、考えながらやっている場面と、直感的にやっている場面を行ったり来たりしている子が多かったというのがよかった。・のりや絵の具が変化するスピード感が、子供たちにとって魅力的だったのではないか。例えば、のりを垂らした時にすぐに流れるのではなく、ゆーっくり流れていくことや、外に出て乾かすと、すぐに固まって、見え方が変化していくことなどが、子供の心を動かしていたと思う。
・つくって見る、つくって見る、が繰り返し行われていて、「見る必然性」のある題材だったので、鑑賞の授業としても成立する内容だった。 


〈高橋先生のグループ〉

・形が完成されすぎていて、今日の時点で大きく方向転換してやり直すのは厳しそうだった。「慎重な足し算」というワードが印象的で、大きなイメージのズレが、段々と小さく収束していく様子だった。箱自体が完成されているので、友達同士で重ねて、下から見上げてごらん、などと提案をしてあげたら、また見え方が変わったかもしれない。

・透明なシートで色をつくってじんわりと味わっている人とか、いろんなものを入れて試してという人がいて、活動が多岐に渡ったので、見取りが難しい。
・別所フェニックス(学校のマスコット)を描きたい、と言ってトレーシングペーパーで写して作品に活用している子がいた。作品を自分らしくつくりたいというのが見れた授業だった。 


〈石渡先生のグループ〉
・教科提案部の先生からの感想。授業者が導入で、自分の趣味の経験の話から始まったのがよかった。
・引き算がしにくい材料だったのではないか。例えば、この箱の中に、エンビ板をもっとたくさん入れておけば、足したり引いたりができてよかったかもしれない。
・ねらいを、もう少し絞ってもよかったのではないか。色の重なりが大事なら、シートとか平面的な重なりでよかったかもしれない。空間ということで、ボックスアート的な要素も含められていたのがどうだったのか。


~~南先生による指導・講評は次回お送りいたします。~~

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