【図工室探訪】墨田区立第一寺島小学校 餅 和子 先生

※本取材は、2020 年 1 月に行われました。

 都内各ブロックの図工室を探訪し、「空間」にとどまらず、「人」「取り組み」「考え方」など、 多角的な視点から取材をし、発信していきます。今回は、城東ブロックより、墨田区立第一 寺島小学校の餅和子先生の図工室です。
 
  心をつくる、心地よさの中で週に一度の図工の時間、私たちはどのように子供たちを図工室に招き入れるでしょうか。 餅先生がまず行うのは「目の前の子供たちと繋がること」だそうです。 「みんなが抱えているエネルギーを感じてキャッチボールをする。そうやって会話しなが ら子供たちの気持ちをひらいて、お互いに繋がったなって確認するの。」
   授業に自然と集中していけるよう、子供たちの心に働きかけること。今日やらなくてはいけ ないこと、やらせなきゃいけないことに頭がいっぱいになっていると、ついつい焦って授業 を進めがちですが、きちんと目の前の子供たちの心に向き合うことの大切さを教えていた だきました。
  図工室の入り口、そして黒板脇にも掲げられた「ありがとう」「ごめんなさい」「ゆるします」 「あいしてる」は、ハワイに古代から伝わる問題解決のメソッド、「ホ・オポノポノ」の言 葉たち。 「子供たちは、一人一人みな愛される存在。成長していく中で、誰かと比べたりして、ある がままの心を曇らせてはいけない。」 子供たちが自分という存在を大事にして、自分の本当にしたいこと、自分らしく表現してい くことを大切にしていけるように、いつもこの言葉を投げかけているそうです。 そうして、小学生なりに抱えた手枷、足枷を解いて、主体としての子供の存在を認めること で、子供たちが「〜していいですか?」と聞くのではなく、「〜します!」に変わっていく のだそうです。
 窓際に輝くカラーボトル。天気や光によって見え方が変わる色は、単なる材料や用具ではな く、私たちの心と体とも結びついている気がしました。
 
   授業の終わりに近づくと流れる、映画「アメリ」の音楽。細かい指示を出さなくても子供た ちは、少しずつ集中を解きほぐし、片付け始めるそうです。
 その時の精一杯を重ねて...30年以上に渡る教職経験、図工が好きで好きで続けてきたという餅先生ですが、元々アカ デミックな美術教育は受けてこなかったといいます。 「都図研は学びの場で、色々なことを教えてもらい、チャレンジすることができた。」
 墨田区の研究についても少しお話を伺うと、墨田区では一つの研究授業に際して、部内の図 工専科全員が詳細なフィードバックを行い、一つの授業ごとに研究授業の報告冊子が出来 上がるそうです。

 言葉を尽くして考えたり、議論したりする研究の土壌があるといいます。 図工部全員で行う研究は、意外と出来そうで出来るものではありません。参考にしたいですね。
学校の「図工室」という場 学校教育の環境をいかに整備するかという議論は、数多あります。
    図工室という空間をどんな場として、学校に存在させるか。子供たちの気持ちを掻き立てる ことも落ち着かせることも大切で、それはとっても絶妙なバランスで成り立ち、先生の人と なりが表れるところではないでしょうか。

 餅先生の図工室の前には、子供の作品や先生ご自身の作品など、大型の作品が壁に立ち並ん でいます。
 
 殺風景な学校の廊下の景色が一変し、アートの林を抜けるようなそんな特別感に包まれます。

 子供の心をパッと解放し、意欲を掻き立てるような図工室。この日、初めてお会いした私を終始笑顔で快く対応してくださった餅先生。
 本当にありがとうございました。
図工室を出た後の帰り道、世界が輝いて見えました。
 さすが、墨田区。何よりも高く、天を突き刺すようにスカイツリーがそびえ立ちます。
取材担当:山崎ゆき(江戸川・下鎌田西小)
 

東京都図画工作研究会

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